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東京地方裁判所 昭和40年(レ)570号 判決

控訴人 山田初蔵

右訴訟代理人弁護士 多田成

被控訴人 株式会社福入商社

被控訴人 入江晃正

右両名訴訟代理人弁護士 真木洋

主文

原判決を取消す。

被控訴人らの請求を棄却する。

訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

事実

第一、申立

(控訴人)

主文第一、二項同旨の判決。

(被控訴人ら)

「本件控訴を棄却する。」との判決。

第二、被控訴人らの主張

一、訴外佐竹清は昭和三六年六月二八日東京都墨田区寺島町一丁目一七番地の二二宅地一六坪一合三勺(以下本件土地という。)をその所有者提著義之助から買受け、その上に昭和三七年三月頃家屋番号同町一七番の二二の二木造瓦葺二階建居宅一棟建坪九坪五合二階八坪一合七勺(以下本件建物という。)を建築して所有していたところ、本件建物のみについて同年四月一七日訴外株式会社東京相互銀行に対し根抵当権を設定し、同銀行による右根抵当権実行の結果昭和三九年九月二五日被控訴人らが本件建物を競落しその所有権を取得した。

二、しかるに控訴人は佐竹と共謀の上本件建物の前記競売手続を妨害する目的をもって、真実は所有権の移転がないにもかかわらず、右競売開始決定がなされた日の三日後である昭和三九年一月二四日本件土地の所有名義を控訴人に移転し、控訴人において佐竹を相手どって墨田簡易裁判所に対し「佐竹は控訴人に対し本件建物を収去して本件土地を明渡せ。」との訴を提起し、(同裁判所昭和三九年(ハ)第一八号事件)いわゆるなれあい訴訟の結果控訴人勝訴の判決がなされ右判決は同年五月六日確定した。

三、右のように本件建物の競落人たる被控訴人らの権利を侵害するため、真に控訴人が本件土地の所有権を取得したものではなく、且つなれあい訴訟の結果取得した前記判決の債務名義にもとずく控訴人の佐竹に対する本件建物収去による土地明渡の強制執行は到底許されるべきではない。

四、仮りに控訴人が佐竹から本件土地所有権を取得したとしても、本件建物に根抵当権を設定した当時本件土地は佐竹の所有であったから被控訴人らは本件土地につき法定地上権を有しており、控訴人の前記判決による強制執行は許されない。

五、よって被控訴人らは控訴人に対し前記確定判決にもとずく強制執行は許さないとの判決を求める。

第三、控訴人の答弁

一、本件建物が佐竹の所有であったこと、被控訴人ら主張の確定判決があること、佐竹が根抵当権を設定した当時本件土地が同人の所有名義であったことは認めるが、被控訴人らが本件建物の所有権を競落により取得したことは知らない。

二、本件土地は控訴人が前記所有者提著から昭和三六年六月頃佐竹を介して買受けたもので、同人が勝手に提著から自己名義に所有権移転登記し、控訴人は被控訴人ら主張の日に漸く佐竹からその所有権移転登記を受けたものである。

三、その余の被控訴人ら主張事実は否認する。

第四、証拠 〈省略〉。

理由

一、被控訴人ら主張の確定判決があることは当事者間に争いがない。

二、被控訴人らは、右確定判決は被控訴人ら主張のような経違で右判決において収去を命ぜられた本件建物の競落人である被控訴人らの権利を害する目的をもって、仮装の事実関係にもとずいて成立したものであるから被控訴人らに対する強制執行は許されないと主張する。現行民事訴訟法は確定判決に既判力を与え、再審事由に該当する場合以外は既判力の基準時以前に生じた事実を理由にその取消を認めないこととして法的安定性をはかっているのであって、被控訴人ら主張の事実があるとしても右確定判決に既判力、執行力がないとはいえない。そして確定判決にもとずく債務名義に対する請求異議の訴は既判力の基準時後に生じた事実によって債務名義に表示された権利が現在の実体的法律状態に一致しないことを理由に債務名義の執行力の排除を求めるものであるところ、被控訴人らの右主張はかかる事由に該当していないから理由がない。

三、被控訴人らは本件土地につき法定地上権を有すると主張するが、右主張は民事訴訟法第五四九条の第三者異議の訴の事由としてならともかく請求異議の事由とはならない。そして、第三者異議事件とすれば専属管轄の規定に反していることとなる。

右主張は理由がない。

四、よって被控訴人らの本訴請求は爾余の点につき判断するまでもなく失当として棄却すべく、これと結論を異にした原判決は不当として取消すこととし〈以下省略〉。

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